Pretty Pet
それからはあたしと芽依は集中して、せつらと阿木さんから勉強を教えてもらった。


ついでにヤマの張り方や出題傾向なんかもばっちり教えてくれて、すごーく助かる。


こんな時、やっぱり年上の人って頼りになるなぁ。


タメだと相手の頭がよっぽど良くない限り、こうはいかないもんね。





「お。もう8時半だな。そろそろ帰るか」


阿木さんの一言で、勉強会はお開きとなった。



「俺はバスで芽依を送ってく。路線一緒だし」

「ああ。俺が睦月を送るから。お前らじゃーな。睦月、車回して来るからここでちょっと待ってな」


せつらは芽依や阿木さんに別れの挨拶をして、駐車場に歩いて行った。






………やだ。


一時でもせつらと離れたくない。




衝動的に、あたしはせつらの後を追いかけた。


帰りの車中はせつらが話すことに、あたしが曖昧に返事をする、そんな感じだった。



せつらと二人きりって事を意識してしまって、何を話しているのかさえ耳に入ってこない。



「……でね、聞いてる?睦月?」


せつらが車を停めてあたしの顔を覗きこんだ。



近い近い!


心臓持たない!



「睦月、顔また真っ赤。どうした?」


せつらがそう言いながらニヤリと笑って、あたしの顎を持ち上げた。


絶対分かっててやってるよ!


もう嫌になる………。



「……あのね、今日、彼氏と別れてきたの……」


もう何を話せばいいのかが分かんないあたしは、テンパってそんな事を言ってしまった。



「……それで睦月には、わだかまりはないの?」

「うん。一方的にだけど、『別れる』って言ったらスッキリした」


そ…か、と呟いてせつらは目を窓に移した。


「………俺と、付き合ってくれる?」


顔を上げると、せつらのまっすぐな視線とぶつかった。



あたしはその目を逸らすことができず、せつら自身に絡み取られたように、こくんと頷く。



「……良い子」


せつらはそう言いながらあたしの頭を撫で、もう一度顎を持ち上げた。


次に何をされるのかは分かっているのに、体は痺れたように動かない。



ゆっくり落ちてきたせつらの唇を受け止めるので精一杯。



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