Pretty Pet
浴衣から覗く、せつらの鎖骨に汗が滲んでいるのがやけに色っぽくて、またドキドキする。



「お前、まだ髪乾いてねーじゃん」


せつらがあたしの髪の毛を指に絡めて遊び出すと、もう心臓は限界で破裂しそうなくらい。


早足で芽依や阿木さんから逃げるように部屋に向かうと後ろからクスクス笑う声がした。


「あいつら好き勝手言いやがって」

「せつらも冷やかされた?」

「ったく人の詮索すんじゃねっつの。変に意識しちまうのに」

「意識って。何を?」


どんなからかわれ方したの、せつら。顔が真っ赤なんですけど。


「……睦月さ」

「何?」


顔を赤くしたまま、せつらがあたしから視線を逸らした。

あたしはそれを追いかけるように、せつらの顔に近づいた。


「お前……。ヤったことない、とか言う?」


……ヤったこと?


「えと。え…エッチ…の事……?」


さすがにこの質問に答えるのは戸惑ってしまう。


けど。



「一応、ある……けど。初めてじゃないとせつらは、嫌…だった?」

「違う!そうじゃなくて、尚が睦月は初めてっぽいとか言うから……!ごめん!」

「謝んないで。そ…か。あたし、初めてっぽく見えるの、年上から見たら?」


これって悲しむべきなのか喜ぶべきなのかがよく分からないんだけど……。


「俺はどんな睦月でも好きだし。別に……まぁ。なんだろ?」


珍しくテンパったせつらの姿に大笑いしてしまった。


部屋に戻りベッドの上にダイブすると、スノボの疲れが今頃どっと出てきて、なんだかだんだん眠くなる。



「寝てんじゃねーよ」


耳元でふぅっとせつらに息を吹きかけられた。

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