Pretty Pet
「……つやつやのぷるぷるってさ、睦月ちゃんはそういう経験ないの?彼氏は…いないか?そんなんだと」



むか。


「彼氏はいますー。残念ながら」



なんであたしは知らない人と知らない人の車に乗ってんの。


しかも助手席。



「マジで !? 睦月ちゃん彼氏いんの?」


なんでそこで驚く?


「なんでそんなに驚くんですか?いないように見えますか?」


失礼な。つーか、こう言われた時の為にカレカノやってるあたしと陸斗に問題があるのかな?



「……うん。見える」


えぇ?なんでそう見えるんだろ?



「睦月ちゃん見た目綺麗系だし、身だしなみやメイクもきちんとしてるけど、なんて言うか……。『恋してる女の子』っぽくない、から」



それさっき聞いた。芽依から。



「……あたし、さっき芽依にも言われました。あたしは『枯れてる』って」




氷室さんは車を左折させて、そのまま直進してまっすぐな道をひたすら走らせていく。


……おいどこ行くんだよ?



「俺の母親が小さい美容室やってんだけど、新人美容師の練習台を探してるんだよね。睦月ちゃんに今から頼めないかな?」

「今から…ですか?」



そ、と短く答えて氷室さんはハンドルを片手にもう片手の手で、あたしの髪を鋤いた。




うん?


今少しドキッとしたぞ?


氷室さんに触られた髪がなんだかむず痒いってゆーか。


そこから広がって、全身が変に熱っぽい。




「髪は……そろそろ切ろうかと考えてたから、タダならお願いしたいです」

「うん、新人だからね。お金は要らない」



< 7 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop