貪欲有罪者。《仮タイトル》
瞬生side.
今のは惜しかったな。
もうすぐで燐果のキスがというときに
母親が入ってくるとは。
こっそり目を開けた。
…寝てるのか寝てないのかさえも分からん。
この寝息のたてかたは…
『…おーい?』
…すう、すう。
起きていないようだ。
ここには生々しい吐息と俺を包む静寂しかない。
午前2時5分。
もう曖昧になった藍と紺が深く混ざりこんで、露出された肩の輪郭さえつかめない。
華奢な腕に触れる。触れて、しまう。
ぴくりとも動かずにそっぽをむく燐果。
まるで俺を受け入れるかのように漂わせる妖艶なシャンプーの香り。