マー君(原作)
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夕暮れ時、洋太は都会にある総合病院に来ていた。

広い駐車場で車を降り、白い建物に向かう。

だが、その足取りは重かった。

ここに来たのは他でもない、上田良一に会うためだ。

だが、その良一とは高校のクラスメートであり、いじめをしていた関係にある。

いじめをしていたのは、洋太の方だ。

そして、良一がいじめられる側だ。

言わば二人はプラスとマイナスの関係にある。

そんな二人が今更仲良くできるわけもなく、会うなどもっての他だ。

それでも洋太はここに来た。

仕事として。

しかし実際の所何か引っかかるものがあった。

マー君。

これが。

上田良一がマー君に関わりながら、今もなお生きていることが不思議でたまらない。

今までマー君に関わった者はことごとく消えている。

死んだ者や行方不明になった者--。

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