マー君(原作)
梨華は下着姿のままベットから立ち上がると、小さな背中越しに消え入りそうな声を出す。

「そんなの、嘘だよね、ねぇ裕二?」

その時になって裕二は自分の言葉の重みを理解した。

慌てて立ち上がり、弁解する。

もう間に合わない、そう思いながらも。

「あ、ああ・・・・・・嘘、だよ。あーと、さ、っきは・・・・・・」

気まずい空気が流れる。

カーテンを締め切っている薄暗い部屋は、その空気に呼吸するように更に暗くなっていく。

裕二は冷や汗をかきながら、その空気を吸い続けた。

すると、急に梨華が笑い出した。

「そ、そうだよね! 裕二がそんなこと言うわけないもんね。だって--」

暗闇の中、梨華が振り向いた。

その顔に、裕二は逃げ出したい衝動に駆られた。

梨華はにたりと笑い、可笑しそうに笑っている。

暗い中、その顔は不気味に笑い続けた。

「だって裕二言ったよね。私が誰よりも1番好きだって。裕二が私を嫌いなわけないもんね」

またにやりと笑い、凄みをきかせて迫る。

「ね、そうでしょう?」

その声に暗く寒気を覚えた。

裕二はただただ立ち尽くしているしかなかった。

この時初めて女が恐いと思えた。
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