マー君(原作)
「よう、た。なんで、なんで、こん、な」

「どけよ、やらねーなら俺にやらせろ!」

脚を掴んできた良一を洋太は冷たく見下ろした。その間に、洋太の仲間が割って入ろうとした。が、洋太はその前にしがみつく良一の襟元を掴み、そして――。

俺は忘れようとした。

全てを。

友達も、何もかも。

それは俺があいつを――。

「洋太!」

良一が叫ぶ中、洋太は無表情のまま、かつて親友であった男の顔に拳を向けた。

その瞬間、声がした。

忘れようとしていた、あいつの声が――。

だが、拳は止まらなかった。止めれなかった。

怖かった。

そう、怖かったんだ。自分が。

「良一……」

洋太は床に倒れた良一を見下ろし、ふと仲間のいる方を振り返った。その時、白い物が見えた。仲間の後ろにある鏡に映る白い物が。

それは洋太の顔を覆い隠していた。白い、血だらけの仮面が自分の顔を覆い隠していた。そして、その顔はこっちを見て、にやりと笑った。

それはまさに、偽りの自分の姿そのものだった。洋太はそれを見て、叫び散らした。声が枯れるまで、永遠と。仮面を脱ぎ捨てようと、必死にもがいた。

必死に。

「うっう、うわあああああああああ! や、や、やめろおおおおおおー!」

声が枯れるまで。
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