マー君(原作)
自殺サークル編
自殺サークル編
<1>
死にたい……。
いつも思っていることなのに、できない。自分にはそんな勇気はないのだから。
橘勝田は、何年も通りつづけている帰路をとぼとぼと歩いていた。
夜中の住宅街は無音の世界だ。外灯の心細い明かりが道を照らしている。
勝田は四十代半ばで、小太りした腹がスーツをきつく締め付けている。全身はぼろぼろだ。着ている茶色のスーツは所々破れ、汚れている。
ついさっきおやじ狩りに会ったのだ。生涯始めての経験だった。だからか、ショックもひどかった。
おやじ狩りに会ったのは、この近くの公園だった。毎日近道と思い公園の中を通って帰宅していたが、今日は違った。
公園の中腹辺りまで来た所で、数人の若者に囲まれた。皆変な仮面をつけていた。
血のような赤いインクがついた白い仮面――。
最近若者の間でマー君という話がはやっているようだ。その影響なのだろう。勝田はふてくされながら、痛む腹部を押さえる。
「なんで、私がこんな、目に……」
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死にたい……。
いつも思っていることなのに、できない。自分にはそんな勇気はないのだから。
橘勝田は、何年も通りつづけている帰路をとぼとぼと歩いていた。
夜中の住宅街は無音の世界だ。外灯の心細い明かりが道を照らしている。
勝田は四十代半ばで、小太りした腹がスーツをきつく締め付けている。全身はぼろぼろだ。着ている茶色のスーツは所々破れ、汚れている。
ついさっきおやじ狩りに会ったのだ。生涯始めての経験だった。だからか、ショックもひどかった。
おやじ狩りに会ったのは、この近くの公園だった。毎日近道と思い公園の中を通って帰宅していたが、今日は違った。
公園の中腹辺りまで来た所で、数人の若者に囲まれた。皆変な仮面をつけていた。
血のような赤いインクがついた白い仮面――。
最近若者の間でマー君という話がはやっているようだ。その影響なのだろう。勝田はふてくされながら、痛む腹部を押さえる。
「なんで、私がこんな、目に……」