マー君(原作)
<3>

おやじ狩りに会った次の日に会社に行く気にはなれなかった。

それ以前に生きていくことも嫌になっていた。だから、眠くもないのに起きず、ただぼうとしていた。

そうして一日が過ぎた。あまりにも呆気ない。ただ一日寝て過ごした。何も食わず、何も飲まず、何も見ないで、暗闇の中で呼吸を続けていた。

夜中になるとまた昨夜と同じようにテレビを点けた。今日始めて動かしたのがリモコンのボタンを押す指だ。

正確にはその指の手と、腕、肩、まあ、どうでもいいことだ。

勝田は死んだ魚のような目を開けたままニュースを見た。ニュースはまた昨夜と同じ女性アナウンサーだった。

今日も眠そうな顔をしている。

「今日の朝にお伝えしたマー君の新たな事件ですが……」

またマー君の事件が起きたのか……。勝田はどこか嬉しかった。なぜか知らないが、自分はマー君という未知なる存在を応援していることに気づいた。

それでも生きたいとは思わないが。
< 301 / 604 >

この作品をシェア

pagetop