マー君（原作）
＜２＞

佐々木春香――私は、クラスの中では人気者だった。

容姿や明るい性格がクラスの皆に好かれ、いつも中心にいた。

だけど、それは私の勘違いで、本当は私はどこにもいなかった。

あの日を境に、私は本当の自分の正体に気づいた。

偽りの仮面がはがされ、私は私になった。

「ねぇったら、ねぇ……おい！」

教室の真ん中の席で、四人の男女が席に座って俯いている女子を囲んでいる。

席に座っている女子は乱れきった黒髪をだらりと垂らし所々染みがついた制服を着ている。

机には死ね、消えろ、ブス、臭いなど耐え難い文字が大きく殴り書きされ、彫刻刀でいくつも傷がつけられ、とにかく見るに耐えない光景だった。

その光景を一番後ろの窓側の席で友達と見ていた春香は、痛まれない気持ちにさい悩まされていた。

春香は正義感が強く、最近起きたいじめについて、ひどく頭を抱えていた。

しかし、それもまた偽りの自分であり本当はただ逃げたかっただけなのかもしれない。

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表紙・目次

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