マー君(原作)
修二の声に戻る。

「けど、立ち向かうことはできる。僕は母さんを殺さない。それだけでも十分だ。母さんは関係ない! 例え嫌いでも大切な人なんだ。だから!」

また声が変わる。しかし今度は苦しんでいるようだ。修二は仮面を押さえたまま走った。いやジャンプした。机の上に−−。

「邪魔するなあああああああああああ!」

そう叫びながら、修二は空いている窓から飛び降りた。母親は咄嗟に修二を掴もうとしたが、できなかった。

「修二、修二いいいい!」

窓から下を見下ろす。しかしその時には修二の姿は闇の中に消えていた。

眼下に広がるのは誰もいない家の庭だった。それでも母親は叫び続けた。

「修二いいいいいいい!」

その声は遥か遠くまで聞こえたかと思われた。
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