マー君(原作)
<3>

春香は携帯電話の中の自分に心から話しかけた。

かわいい、かわいい、私。

誰にも否定されることのない、私。

電車は徐々にスピードを落としていく。

そろそろ次の駅につくのだろう。

しかし、春香にとっては関係ないことだった。

彼女が下りる駅は終電で、次の次の駅まで降りることはないのだから。

ついネットゲームに夢中になっていた春香は、前の方で何かが動くのに気づき、顔を上げ、ちらっと向いに座る女を見た。

ずっと俯いたままで気味が悪い。

ホラー映画に出てきそうな女だ。

そいつは今肩を震わせている。

関わらないほうがいいと察し、春香はまたネットゲームに戻った。

ゲームの中では、ハルがもうすぐ次の街につく所だった。

ただ、さっきから気になっていたのだが、街の前に検問みたいに立っている小屋がある。

そこを通過しなければ街にたどり着くことができない。

このゲームは現代の世界に入ると、道ではない道を進むことができなくなり、必ず道路や歩道を通り進まなければならないのだ。

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