マー君(原作)
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「で、なんで俺をまたあの部屋に?」

洋太は吉沢の後に続き、長い一直線の通路を早足で歩いていた。その通路は洋太が初めて部屋から出た時の物だった。両側にいくつかドアがあり、1番奥にモルグに通じる赤いドアが立ち塞がっている。

吉沢は機嫌が悪いようで、足音が荒い。さっき誰かに電話をしていた時も、ずっと怒鳴りっぱなしだった。

「おいおいだんまりかよ」

洋太はずっと黙っている吉沢をからかうように言った。それでも黙っているので、鼻で笑ってやった。

と、次の瞬間、勢いよく壁に押し付けられた。吉沢が息を荒げて、サングラス越しに洋太を睨みつける。

「黙れ! 貴様今どういう状況かわかっているのか? ああ?」

洋太の襟元を掴む手に力が入る。

「さっきの放送で、政府はマー君の存在を他国から責められているんだぞ! このまま日本がマー君について隠すなら、他国は武力を持ってこれを制すると言っている。マー君の被害は世界中で今も起きている。その被害は甚大だ。世界中で今日本は責任を追及されようとしているんだぞ!」
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