マー君(原作)
<3>

生徒達はうんともすんとも言わず、ただひたすら彼女を見つめている。桂子はその光景に少しばかり圧倒された。

全く子供とは恐い。

興味というビンの底が見えない。大人と違うのは、恐いと思うより先に興味がでてしまう所なのかもしれない。

桂子は肩の力を落とし、授業を始めようと教卓の上に上がっているいる教科書を取った。

「じゃあ、授業をはじめ――」

「先生!」

生徒の一人が手を高々と上げた。教室の真ん中の席だ。肩まで髪を垂らした色気のある少女である。赤いスカートにプリントが入った白いTシャツを着ている。少し化粧をしているのか、顔が白い。桂子の顔はそれより更に白いが。

桂子は嫌な予感を覚えつつ、手を上げる生徒に尋ねた。

「何? 真野さん」

真野と呼ばれた少女は立ち上がると、息をつく間もなく一気にしゃべった。

「先生は、マー君はいると思いますか? マー君はネット上の殺人鬼です。だったら、ネットを繋がなければマー君と会うこともないんじゃあないですか?

ネット伝説なら、今の事件が本物のマー君なら、そうすれば、いいんじゃあないですか? ネットを繋がなければあっちの世界にいるマー君は、こっちに来れない。違いますか?」

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