マー君(原作)
男は首を傾げ、ドアを見つめた。部屋のドアの前には服や菓子が散乱していたが、男の目には入らなかった。

ガチャ、ガチャ!

突然、ドアノブが回った。

しかし、ずっと鍵をかけているため、開くことはなかった。

しばらくガチャ、ガチャと鈍い音が続く。

親父だろうか?

男は妙な胸騒ぎを覚えた。

マー君の話をしたばかりもあり、知らず内に、背中に冷や汗をかいていた。

部屋は真夏とありエアコンをかけていたが、それでも冷や汗が全身から溢れ出た。

尋常ではないくらいに。

「いったい、これは……」

ドアはしだいにガチャガチャと勢いよく回される。

親、じゃあ、ない。

親ならノックぐらいするし、こんな乱暴に入ってこうとしない。

それに今は夜中だ。

こんな時間に部屋に入ってくるのもおかしい。

次第に、男は不安になり、息が上がった。

「だ、誰だよ、お、おい! おいったら!」

そう叫ぶと、急に静かになった。外にいる者がノブを回すのを止めたようだ。

男はまだ警戒していたが、もう動きがないと見ると、肩を大きく落とした。
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