マー君(原作)
<18>

「女に電話か?」

吉沢が鼻で笑い、デスクに重い腰を下ろす。着ているスーツは大きく裂け、胸には赤く染まったシャツがへばりついている。

「呑気なもんだな、こんな時に女とイチャついて--」

「うっせぇーよ!」

洋太は切れた携帯電話を耳に宛てながら、大声で叫び散らした。その声は密室の空間に鈍く響き渡る。

洋太はしばらく携帯電話を耳宛てたが、出る様子がないため仕方なく電話を切った。

「で、掃除っていうのは具体的にはどうするんだ?」

携帯のカバーを閉じ、壁に背を預け吉沢に向き直る。彼は大分落ち着いたようで、顔色が少しよくなっている。それでもサングラスの下にある目は険しさを増しているような気がした。

「まさか、小学校の生徒全員--」

「違う」

吉沢は俯き、重い口調で話し出した。部屋の外からマー君の笑い声が絶えず聞こえる。部屋に入ってくる様子はないが、何かを切り裂く音が聞こえる。

そんな騒がしい中、吉沢の話が始まる。洋太は腕を組んでじっと吉沢の顔を睨んでいた。

「掃除では、まず軍が学生、職員を学校内から避難させることから始まる。シナリオは学校に爆弾が仕掛けられたとかだ」
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