マー君(原作)
<29>

眩しい……。とても、眩しい。何も見えないぐらいに。

きっとこれは、夢なんだ。私は夢を見ているだけなんだ。

そう、悪夢は終わった。

私達の手で終わらせた。

マー君は、私達の罪の形。

彼は伝えたかったのかもしれない。

恐怖を忘れるな。

過ちを忘れるな。

生きる意味を忘れるな。

マー君は始めっから、こうなることがわかっていたのかもしれない。始めから消え行く存在だと。

でも、それでも私は忘れない。

何があっても、この恐怖を。

人は確かに弱い生き物だ。いつも偽りの仮面をつけ、嘘をつき続けている。友達といても、家族といても、人は仮面をつけている。

白い仮面を。

でも、それは、きっと私達が弱いだけじゃない。逃げてるだけじゃあない。それは、きっと、きっと――。

心という目に見えない大切な物を持っているからだ。だから――。

だから、私は悲しい。

とても悲しい。

この夢が覚めることが、とても。

それでも、私達はここまで来てしまったのだから。自らの足で。決断したのだ。

偽りを本物にすると。

雨は光の中、微笑む妹の姿を見た気がした。

しかし、次の瞬間何も見えなくなった。何も。

全てが――。
< 594 / 604 >

この作品をシェア

pagetop