マー君(原作)
私はどうしてこんな所にいるんだろう?

私はもう存在しないはずなのに。なのに。

なんで、お姉ちゃんの声が聞えてくるのだろう。

なんで、なんで今になって、声が聞えるんだろう。

もう、何も見えないのに。

雫は涙で多い尽くされる目の前の光景を、じっと見つめていた。

目の前には、雨がいる。こっちを見て微笑んでいる。私はこんなひどいことをしたのに。多くの人を不幸にしたのに、なのに。

微笑んでいる。

笑っている。

私に向かって。

そう、お姉ちゃんはいつもそうだ。いつも笑ってくれた。私を包み込むように。あの頃にもう一度戻りたい。皆が幸せだった頃に。

いつも喧嘩をして、そして笑って仲直りした。

だから、今もそうして、仲直りしたい。もし、まだ時間があるのなら。

家族。

私が拒んできた物。でも、雨は違う。雨は、雨だけは違う。

だって。

雫は目の前に見える雨に手を伸ばした。伸ばせる限り、思いっきり。

もう一度握りたかった。触りたかった。話したかった。

だから――。

お姉ちゃん。

雫は光の中に消える雨を泣きながら見送った。それでも、最後の最後まで笑っていたかった。

お姉ちゃんと一緒に。

でも――。
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