淡い初恋
私達は教室に戻ると早速資料を広げて調べ始めた。「うわ!約15光年だって!」と北沢くんが言うので資料を覗きこむと「織姫さんのベガ星と、彦星さんのアルタイル星までの距離は約15光年。」と記載があった。
千堂くんは「光速で秒速30万Kmだから、それで行っても15年は掛かるってことか。」とつぶやくと「ってか、会うのに相当掛かり過ぎじゃね?」と冷静に聞き返してきたので周りが吹き出した。「で、でも両方から会いに行ったらどうかな?」と私が言うと「それでも7.5年は掛かるからそれでも掛かり過ぎじゃね?」とまた言ってきたのでみんなが笑った。

「え~全然ロマンチックじゃな~い!」と千堂くんの左隣の子が言うのですかさず「じゃぁ、もし仮に会えるとしたらどうなるんだ!?」と北沢くんが言ってきた。

「1光年が1年間に進む距離だろ。その長さが約9.46×1015メートル(約9.46ペタメートル)。で、他の影響を受けない場合、その空間をユリウス年、365.25日で通過するから31557600秒。そして、一年に一度会えると踏まえて、織姫・彦星の寿命を約x歳として恒星の年齢をx億歳とすると、 1億倍の差があるから1年を1億分の一とすると0.315576秒」と淡々と説明する千堂くんの姿をみんなが見守っていた。

「で?」と北沢くんが聞くので千堂くんは視線を彼の方に向けると「つまり恒星の年齢を人間の寿命に置きかえると、 0.315576秒に一回逢っていることになる。ってか、逢い過ぎじゃね?」と言ってきたのでみんなが吹き出した。

みんながあははは~と大笑いする中、私と隣の大人しい男子生徒はクスクスと笑った。確かに、もうめちゃくちゃじゃんと思って両手で口を抑えながら笑っていると千堂くんと目が合った。

え!?
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