淡い初恋
龍くんの家は高級住宅街にある豪邸だった。「うあぁ、でかい!!」と仰け反ってその全貌を見ていると「ほら、行くよ。」と言われてしまったため、私は慌てて彼の後に付いて行った。「おじゃましまーす。」と言って家の中に入ると龍くんの家の香りがした。彼の後に続き、すぐ玄関近くの扉を開けて部屋に入ると彼と良く似た男性がソファに座り読書をしている姿が目に入った。

その男性が「お!」と私の存在に気づき反応してきたのですぐさま「初めまして!龍く・・・龍之介さんとお付き合いしてる高梨希です!」と挨拶するとその男性は本をソファの上に置くと立ちあがり、「あ、初めまして。兄の宗次郎です。」と言ってきた。私がお辞儀をすると「いやぁ、龍之介が女の子連れて来るの初めて見た。と、いうか随分と可愛いね。」と言ってきた。隣で龍くんが鼻で笑ったのが聞こえた。

私が、初めて。しかも可愛いだなんて、その言葉に嬉しくなりついにやけていると龍くんが私の手を掴み、「じゃ、俺らは部屋に行くから。」と言って私の手を引っ張るとそのままリビングを出て階段を登り始めた。

二階にある彼の部屋に入ると「そこに座ってて」と言われ、彼が何かを探し始めたので私は、カーペットの上に座ると辺りを見渡した。寄せ書きが書かれたバスケットボールが置かれ、壁にも4と書かれたバスケのユニフォーム
が飾られていた。龍くんは中学校時代、バスケでMVPを獲得した。それだと思われるトロフィーも置かれていた。他にも彼が優勝トロフィーと表彰状を持ってチームみんなと喜んでる写真が目に入った。こんなに凄いのに高校ではバスケやらないのかなとふと数々の写真に見とれていると、小さい頃の龍くんがボールを持って宗次郎さんと笑顔で写ってる写真が目に入った。

「お兄さんって龍くんと似てるね」とつぶやくように言うと「え?どこが。」と聞かれた。「顔とか雰囲気とか」と言うと「まぁ、兄弟だからな。」と彼は応えた。すると探していた物が見つかったのか彼は何かを取り出すと私の隣に座って来た。キャ!!距離が近い!!緊張して一瞬俯くも、すぐさま顔を上げて「龍くんのお兄さん、優しくて格好良かったね。」と動揺を誤魔化すように言うと彼がいきなり私の頬をつねってきた。

「い、痛ひ・・・。なにひゅるの~。」と言うと「これ以上、兄さんを褒めるの禁止。」と言ってきたので私は、彼の露骨な態度に嬉しくなった。彼が指を離してきたので「もしかして、嫉妬?」と聞くと彼は「うるさい」と応えた。それがあまりにも可愛くて思わず胸がキュンとなると更にいじめたくなって「もしかして、ひがみ?」とからかいながら聞くと彼が急に、ため息をついて俯いたので私は焦った。もしかして地雷を踏んだのかな。そう思って「ご、ごめん!!」とすぐさま謝ると龍くんは吹き出し、「冗談だよ。」と言ってニカっと笑った。

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