淡い初恋
「え、っと、あの・・・『子貢が君子について尋ねた。先生(孔子)は答えておっしゃった・・・。言ってから行うこと。つまり有言実行。」と言うと「違いますね。」と先生に即答された。「もう、良いわ。次、千堂くん。」と言うと私は着席し、彼は教科書を持って立ち上がった。

「『まず言いたい事柄を実行した後で、自分の主張を述べる人こそ君子である』 孔子は初めから知識に依拠した主張を行うのではなく、まず自分がその主張に見合った行動をしてから、その後で思想や理論の主張をしなさいと説いた。」と隣でスラスラと説明する千堂くんの低い声が聞こえた。
私は彼の方を見ること無く俯いていた。恥ずかしい、穴があったら入りたい。千堂くんの目の前でこんな失態をしでかすなんて・・・もうヤダ・・・。

「素晴らしいわね。」と先生が拍手をすると周りのみんなは「お~」と言って彼を称賛した。私は肩身の狭い思いでいっぱいだった。私のことどう思ったのかな?きっと馬鹿な子だと思ったよね。でも、恥ずかしいからなんとも思ってくれてない方が有難い!!私は今度から余所見をせず、なるべく授業に集中出来るようにと自分に言い聞かせた。


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