淡い初恋
受験シーズンが到来。私は得意科目だった英語を生かし、外国語大学に無事合格した。

卒業式の日、加奈子ちゃんと別れを惜しんだあの日、龍くんの姿を探すと彼は一人校門を出たところだった。噂では見事K大の経済学部に合格したと耳にした。本当にすごいね、龍くん。離れ離れになって、もう二度と龍くんとは会えないかもしれないけど、私はいつだって龍くんの味方だよ。龍くんの夢が叶うように陰ながら応援するからね。と心の中で思いを伝えた。


卒業式の後、彼の家の近くにある公園のブランコに座ってただ俯いていた。龍くんに会いに行こうとした。けど、やっぱ怖くて、会いに行けなかった。今更会ったところで何も変わらない。そんな気がして、彼の家には行かずこんなところでブランコに乗って揺れていると「大丈夫ですか?」と声をかけられた。「え?」顔を上げると女性なのか男性なのか一瞬分からない人が私に声をかけてきた。「あ・・・。」私はその人の全身を隈なく見ると服装が男の人っぽく、胸もないし、喉仏が出ていたため男だと判断すると「あ、はい。」とだけ応えた。「ずっと俯いていたので、大丈夫かなと思ったのですが。元気そうなら良かったです。」と言うと彼は天使のような笑顔で微笑んだ。「あ、いや、すいません。」と言うと、ごめん、待たせてという男の人の声が聞こえた。その方に振り向くと宗次郎さんが駆けてくるのが目に入った。一瞬ドキッとした。

私と龍くんが別れたこと知ってるだろうし、変なことを詮索されたらどうしようと思っていると「あ、希ちゃんも、いたんだ。」と気まずそうに声をかけてきた。「あ、はい。」もしかして私が宗次郎さんのことを好きって言ったこと知ってるのかな?と思っていると「龍之介には会わないの?」と聞いてきたため「はい、ブランコしに来ただけですから。」と変な言い訳をした。「二人はどんな関係ですか?」と聞くとお互い見合いながら、宗次郎さんがフッと笑うと「高校の時のバスケ部の後輩だ。」と紹介してきてくれた。「ああ、そうなんですね。今も会ってるってことは仲が良いんですね。」と笑顔で言うと「あぁ、仲良いよ。」と宗次郎さんが応えた。

「じゃぁ、俺達もう行くから、気をつけてね。」と宗次郎さんが言うと別れの挨拶をして、二人は公園を後にした。なんでだろう、美しい男性が二人並んでいるのを見るとお似合いって思ってしまう自分がいる。しかも、あの可愛い男性なんて身長が160位なのか宗次郎さんとの身長差が調度良いから、二人が笑い合ってる姿を見ると一瞬恋人同士かと思えてくる。あーバカバカ、何想像してるんだか。私は頭を振ると自分も立ち上がり、家路についた。

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