淡い初恋
大学3年になった頃、私は学科を英語から中国語に転科した。漢字は勿論のこと、母音の数が半端無いため一人「a,o,e,i,u,yu」とつぶやきながら発音を練習していると周りから変な目で見られた。そそくさと改札を渡り、ホームに向かったところ、ある懐かしい女性に出くわした。

「あ・・・。」向こうも気づいたらしく「あ・・・」と声を出した。私は気まずくなりその場から逃げ出そうとしたら「待って!」と言われて立ち止まった。恐る恐る振り返ると、早坂さんは「ねぇ、もし良かったらお茶でもどう?」と遠慮しがちに聞いてきた。

私達は駅前の喫茶店に行くと、テーブルを挟んで向かい合って座った。どうゆう風の吹き回しだろう。彼女と最後に言葉を交わしたのは高校の女子トイレの中だった。私のことムカつくと言ってたのに、なんなんだろうか。紅茶に口を付けた後、上目遣いで彼女を見ると「あの時はごめんね。」と言ってきた。「へ?」と聞き返すと「目の敵にして。あの頃は本当、高梨さんのことが大嫌いだった。」と言ってきた。「はぁ。」と相槌をすると彼女は、伏し目がちに話し始めた。

「なんで何の取り柄もなくて、大人しい地味な子が、千堂くんの彼女なんだろうと思って、目障りに感じてたの。あの頃は千堂くんのことだけを好きであなたに嫉妬してたのよね。」

「でも、今は私、大学中退して親のコネで会社にOLとして勤めてるんだけどそこで知り合った男性と恋をして、今お腹の中にその人の子がいるの」とサラッと言って来たので思わず飲んでた紅茶を吹き出した。

「え!?」「高梨さん、汚いから拭いて。」と言われ、タオルを渡された。「あ、はい。すいません。え!?妊娠してたの?」と聞くと彼女は頷いた。

通りでキャラが変わるはずだよ。母親になるんだもん。そう、妙に納得をすると私は「良かったね。おめでとう!!」と言った。すると彼女はありがとうと言って優しく微笑んだ。
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