淡い初恋

再会

大学を卒業すると私は都内にある旅行会社に就職した。毎日、忙しくていつも終電で帰るのが殆どだった。体力的にも精神的にもきつい仕事で鬱にも若干なりかけたけど職場は良い先輩や同期、後輩に恵まれ、私はなんとか続けていくことが出来た。

そんなある日、私は懐かしい人と電車の中で再会した。最初に気づいたのは彼だった。「もしかして、高梨さんじゃないか？」社交的な明るい声がして顔を上げると銀座一丁目から乗ってきた北沢君が私の顔を覗き込むように目の前に立っていた。

「久しぶり、元気か？」と聞きながら私の隣に腰かけてきたので「久しぶり！元気だよ。北沢くんは？」と聞き返すと「疲労困憊。」と言ってきた。「何の仕事してるの？」と聞くと大手飲料メーカーの名前を彼が言った。「え～！すごいけどあそこって・・・。」と言うと「残業時間１２０はいくから。」と言ってきた。「えー！！」と叫ぶと口を塞がられ「声でかいって。」と笑われた。私は、ごめんと言うと突然触れられたことに対しての動揺を誤魔化した。でも、決して学校の成績が良かった訳ではなかったのにそんな有名な会社に就職出来るなんてすごいなぁと思っていると「まぁ、前々からメジャーなところに就職したかったしな。」と言ってきた。

「給料どの位？」なんてサラって聞いてみると「内緒。」と言ってニヤっと笑われた。「なんか、怪しい。」と言うと「ってか、会社命令なんだよ。絶対給料は他言しないってこと。」と言ってきた。「なんで？」と聞くと「貰ってる給料の多さに周りが引くからだってさ。」と彼は軽口を叩くように言ってきた。「すご・・・。」と言うとそれ以上は、本当に驚いて声が出なかった。

「マジ懐かしいなぁ。ってか、ここ最近は立て続けに起きてるな。この前はあいつとも会ったし。」と言ってきたので「あいつ？」と聞き返すと「龍之介」と言ってきた。