淡い初恋
日曜日、有楽町に着いた直後、「ごめん、子供が熱を出して行けなくなった。」とメールが来た。「なんだよ!」と私は思わず声に出すと携帯を鞄の中に仕舞い、銀座に向かって歩き始めた。

銀座六丁目の交差点で外国人男性の上半身裸がデザインされたビルに目が留まり、思わず建物の前で立ち止まった。入り口からは爽やかな男の良い香りが漂ってくる。なんだ、この建物。

一人ではさすがに入る勇気が出ないため、暫し上半身裸の写真を眺めていた。龍くんは中学時代、バスケ部に所属していたため引き締まった体をしていると噂で聞いたことがあった。実際は一度も見たことがない彼の体。もしかしたら、このモデルさんのように龍くんも逞しい体をしてるのかなぁと思っていると入り口から一際目立った長身のイケメンが出てきたのが見えた。

モデルの人かな?と思ってマジマジ見るとそれが紛れもなく龍くんだと気づき、私は驚愕した。彼の隣には女性がいて「ねぇ、なんて言ったの?」と彼に聞いているようだった。このチャンスを逃したくないと思った私は、思わず「もしかして、龍くん!?」と声をかけた。
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