深層融解self‐tormenting◆番外編◆
焦る気持ちは抑えようもなく、どんどん膨らんでいく。


それなのに、タクシーは一台も捕まらない。

披露宴からの帰るお客達が、待機中のタクシーを片っ端から押さえてるからだ。



くそっ。時間がねーのにどうすりゃいいってよ!?



「もしもーし?華音がいなくなったって?お前がアワ食って飛び出してったから、安藤達も心配してたけど?」

「……宮藤サン……」

「鷹嘴が二次会場まで皆を乗せてくことになってんだけど、タクシーが捕まんないなら鷹嘴に頼めよ」



藁にもすがる思いで宮藤サンを見た。


披露宴では悪ノリしてふざけてたくせに、なんでアンタはこういう時にはしっかりしてんだよ。……そっちの方がありがたくはあるんだけど。



「連れて行かれた行先は分かってるんで、クルマ出してもらえると助かります」



この際悪人だろうがなんだろうが、華音につながるのなら誰とでも手を組んでやるさ。



「鷹嘴!こっち!」



駐車場にクルマを停めてゆらりと歩いてくる鷹嘴サンを、宮藤さんは手を振って呼びつけた。


「凱の店に行く前にさ、ツンデレ娘を迎えに行ってやってくんない?お持ち帰りされちゃったんだってさ。一丁前に」

「……櫻以外にも物好きっていたんだな」



……持ち帰ったヤツも櫻っつーんですけどね。


まあ、そんなことはどうでもいいか。



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