オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
けれど、頭ではここまで来たのだから腹をくくらなければと分かっていても、昨日の今日ということも相まって、気持ちがついていかない。

最後に、「実はドッキリでしたー!」と言うんじゃないかと期待しながら、ドアに手をかけて中に入ろうとする葉司を見上げる。

が……。


「マコ、ありがとう」

「は?」

「覚悟、してくれたんだよね? 嬉しい」

「い、いや……わわっ、うそーっ!!」


どうやら葉司の目には「よし、入ろう!」とあたしが覚悟を決めて目で合図を出したように映ったらしく、ギュッと手を握られ、禁断の聖域・オトコの娘カフェへとその一歩を……。

とうとう、踏み入れてしまった。


「おはよー!遅くなってごめんね!」

「愛菜!こっちこそごめーん!急にアズミが来られなくなっちゃって、愛菜しか頼れる娘がいなかったのー。ありがとう、助かるー!」

「お互いさまだよー」


店に入ったとたん交わされる野太い声の会話。

開店前の慌ただしい時間帯なのだろう、葉司はニコニコと笑いながら開店準備に加わり、愛菜と声をかけてきたオトコの娘とともにテーブルクロスを広げはじめた。


でもちょっと待って。

あたし、置いてけぼりですの……?
 
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