オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
うわー、呆れているのか、無事な姿を見て安心したのか、はたまた怒っているのか、一番強い感情は一体どれなんだろう。

いつも優雅で妖艶なメルさんには珍しく、本当に表情をコロコロと変えて言うものだから、百面相さながらで、ちょっと面白い。

……いやいや、うん、違うね。


「ご、ご心配をおかけしました」

「あら、いいのよ。ご丁寧にありがとう。それにしても、なんていうか……ひどい部屋ね。あたしが小学生の頃に飼っていた子グマの飼育小屋のほうが、広かったし綺麗だったわよ」

「ごめんなさい……」


いやいやいや、なんで謝っているの、あたし。

メルさんがあんまりサラッと言ったから、思わず口をついて謝ってしまったけれど、自分のお屋敷やクマの小屋と比較すること自体、もともと無理がある話、というものだ。


まあ確かに、家賃のわりには狭い感じもしないこともないし、今は飲み明かし、泣き明かしたあとで部屋が散らかっているのも否めない。

けれど、クマの飼育小屋とお比べになられるのは、さすがにいかがなものでございましょう。

泣いちゃうぞ、あたし。


「まあ、いいわ。それでね、まことちゃん」

「はい?」

「眠いわ。寝てもいいかしら」
 
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