オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
バレンタインの日、野宮さんに部屋まで送ってもらってから、あたしは、葉司との思い出をひとつひとつ思い返していった。
告白された日、葉司の溺愛ぶりにドン引きだったつき合いたての頃、初めてキスをした日、初めて葉司の部屋にお泊まりした日……。
そのほかも挙げればきりがなく、どんなに些細なことでも葉司と一緒だと素敵な思い出になって、まるで毎日が記念日のようだった。
そうして積み重ねてきた日々を、ひとつひとつ数えていくうちに、あたしは気づいたのだ。
葉司はいつも、あたしに誠実でいてくれ、健康だけが取り柄で、ほかに秀でたところなんてないような“フツー”すぎるあたしを、めいいっぱいの愛で包み込んでくれていたのだ、と。
野宮さんに言われた通り、余計な事象を全て取り払い、シンプルに考えていくと、最後に残った気持ちは、葉司が愛しい、それだけだった。
「ねえ、奈々、やっぱり好きなの、って、今から言っても遅くないよね?」
予行演習という名目で葉司への気持ちを洗いざらい告白させられ、散々恥ずかしい思いをしたのだけれど、それと同時に、遅かったらどうしよう……と不安にもなり、奈々に尋ねる。