オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
数歩歩いたところで、メルさんにひょいと首根っこをつかまれ、すでに捕獲されていた奈々とともに、半ば押し込まれるような形でスタッフルームに連れて行かれてしまう。
……あれれ、迷惑でした!?
「邪魔しないでくださいよ!マコはこれから、葉司君にでっかい愛を見せるところなんです!みんなの前で証明するんですっ!!」
スタッフルームに入るなり、メルさんにコートの襟を放してもらった奈々が噛みつく。
出鼻をくじかれる、とはこのことで、あたしはさっきまでの気合いの入った気持ちが一気にしぼんでいき、ぽかーんと口を開けてしまった。
先に一言連絡を、と言われても、メルさんとは番号の交換もしていないし、わりといつも突然なのは、むしろメルさんじゃなかろうか。
でも、どうして場所をスタッフルームに変える必要があったのだろう……。
「そんなこと、分かっているわ。あなたたちがお店に現れた瞬間からね。だからよ。こっちとしても、いろいろと準備があるの。それが整うまでの間、ここで控えていてちょうだい」
「準備……?」
「ええ。あたしの可愛い可愛い、愛菜とまことちゃんのためですもの、とっておきのステージを用意したいの。だから待っていて」