オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
「そういえば、マコは何か買わないの? この間のデートでも、いろいろ試着してたけど」
このワンピ可愛いなぁ……と、着ているモデルさんともども見惚れていると、その紙面を指差した葉司が、若干、不思議そうに聞いてきた。
値段はお手頃だし、買えないほどではない。
けれど、リアルで申しわけないのだけれど、思いきって買ってしまうと、春休みで部屋にいる時間も増えるため、後々に生活費の面が苦しくなってしまう恐れがあった。
「うん、まあ……ご縁があったらね」
そう誤魔化し、あたしはページをめくった。
バイトをしていれば、話は違ってくる。
しかし、そのレンタルビデオ店のバイトは、クリスマスのときの茨城先輩の一件で、丸々3カ月も休んでしまっているし、就職活動だって、このご時世だ、本腰を入れて始めるには、もう出遅れているかもしれない。
ワンピを買うくらいなら、リクルートスーツの一着でも買ったほうが、まだ有意義だ。
それに、正直なところ、いまだに茨城先輩の後遺症がけっこう色濃く残っていて、服を買う気分になれないのも、確かだったりする。
「そっかぁ。俺が買う、って言っても、マコは嫌がっちゃうし、ご縁があるといいよね」
「うん」