オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
「でもさぁ、愛菜。お互いに本気でやりたいことが見つかったんだから、あたしたち、ちゃんと前に進んでるんだよ、きっと」
「そう、かな……?」
「そうだよ!それに、お父さんだって『親父の愛は深し!!』なんだし、大丈夫よ。もしも、どうしても就職しなさい、ってことだったら、アパレル関係の就職先を見つけたらいいんじゃないかな? すぐには無理かもしれないけど、夢はいろんな形で叶うものだと思うよ、あたし」
て、偉そうに言ってしまって恥ずかしい……。
編入試験の勉強も、自分で思っていたように進んでいないというのに、愛菜に偉そうに物を言える立場でもなんでもないぞ、あたし。
「そうだよね。オトコの娘の息子でも、ちゃんと親父は親父のままだもん、愛されてるよね。服のことも、それだけにとらわれないで、いろんな方向から近づけるように考えてみるよ」
「そっか!うん!」
けれど愛菜は、そう言ってにっこり笑う。
まだまだ自分で生きていく術もなく、社会に出る、という現実も知らず、理想論ばかりを語っているあたしたちだけれど、それはそれでいいのではないだろうか、とあたしは感じる。
あと1年と少しの間だけしか、愛菜やみんなと一緒にいられる時間はないのだから。