オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
本心じゃないのに…
向かいの席に座ってもらい、改めて葉司を正面から見ると、葉司はひどく疲れきった顔をしていて、心なしか、これからあたしが話すことに対して怯えているようにも見えた。
何も“別れてほしい”だなんて言う予定はなく、ただ昨日メルさんから聞いたことを葉司にも確認するだけなのだけれど、用件を伝えずに来てもらったため、葉司の顔色はよろしくない。
「まず先に言っておくね。別れたいとは思ってないよ。昨日、メルさんからいろいろ聞いて、一度ちゃんと話がしたいと思っただけ」
「……え、ああ、そ、そうなの? 俺、てっきりマコにフラれるんだとばかり」
「いやいや。葉司があんまりひどい顔をしてるから、それは先に言っておかなきゃ、って」
別れ話ではないことが分かると、葉司はとたんに顔色を明るくし、オーダーを聞きに来た店員さんに威勢よくコーヒーを注文した。
それが運ばれてくるのを待ち、話を切り出す。
「この前は心の準備がまだでろくに話もできなかったけど、メルさんから葉司がオトコの娘になった訳を聞いて、話をしたいって思ったし、葉司のことも“オトコの娘”のことも、もっとちゃんと知っておくべきだと思った」
「そっか、メル、話したんだ……」
「うん」