オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
 
あまり進んでいないお弁当のプチトマトをつつきながら、あたしはぐっと押し黙る。

奈々の言うことは想像できるし、なるべくなら言いたくはないのだ、その……あたしが焚き付けてしまった“本物の女の子化疑惑”のこと。


口にしたら葉司がどんどん女の子化していくような気がして、あたしも、それを言うたび、葉司は女の子になりたいんだ、という思い込みが先行してしまうような、そんな気がする。

それに、今はまだ考えたくない、というのがあたしの本音であり、とてつもなくデリケートな部分ゆえ、奈々にも細心の注意を払って扱ってもらいたい、最重要機密な事柄なのだ。

けれど奈々は、プチトマトをつついてばかりいるあたしに微笑みかけると、こう言う。


「あたし、マコの愛は、たとえ葉司君が“オトコの娘”でも“女の子になりたい男の子”でも、そう簡単には変わらないと思うのよ」


一見すると、何を無責任なことを言っているんだ、と思ってしまいそうだけれど、どうやら奈々は本気で言っているらしい。

顔が真面目だ。

とても。


「それ、買いかぶりだよ。実際、オトコの娘とか女の子化疑惑が出る前は、どんな葉司でも受け入れられるって思ってたよ。それこそ、あたしの愛はでっかいどー!みたいなさ」
 
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