オトコの娘。*彼氏、ときどき、女の子!?*
ライバルかも!?
「あの男、愛菜を本気で狙っているのよ」
しばらくの沈黙の後、メルさんは美しい顔を歪めたまま、吐き捨てるようにそう言った。
奈々もあたしも、メルさんのあまりの豹変ぶりに言葉を失っていたのだけれど、その原因があたしの発言ではなかったのだと分かって、やっとまともに息ができる気がする。
メルさん、顔がすごく綺麗だから、そのぶん、歪めた顔にも迫力が出るのだ。
ほんと、あたしにじゃなくてよかった……。
「愛菜を狙ってるって、ここはオトコの娘カフェですよ? え、あの人、そういう人?」
急に愛菜のことが気がかりになり、目が離せなくなったあたしの代わりに、奈々が尋ねる。
「おそらくね。名前は竹山というらしいわ。それ以外は知りたくもないから知らないけれど、まことちゃんが言ったように、初めてここへ来たときから愛菜に対する愛が過剰だったの」
「うわっ……」
「あっ、アズミ!愛菜のヘルプお願いね!」
答えたメルさんは、いまいち得体の知れない竹山を警戒しているのだろう、近くを通りかかったアズミに、そう指示を出す。
ていうか、アズミはお前か!
もしもあの日、アズミがきちんと出勤していれば今のような結果にはなっていなかったかもしれないと思うと、なぜか無性に責めたくなる。