黒蝶は闇で輝く
動いた“日常”
「最悪の事態です。」
「どうするんだよ?」
「……もう、今更動いてもって感じなのか?」
「西側支部各所に“寄生虫”を忍ばせてたらしい。…もう、西側は全部持って行かれたも同然だ。」
夏休みまであとちょっとという時。
期末考査に向けての勉強をリビングで慧としていたとき、いつになく真剣な表情をしたシンさんとカイさん、険しい表情の桂木さんと三上さんが入ってきた。
……皆の会話で、なんとなく事情が掴めた。
神永が動き出したんだ。
「…お嬢、」
「詳しく聞いてもいいですか?」
「テスト勉強はよろしいのですか?」
「気になって集中出来ません。」
「では、」
説明してくれたのは桂木さん。
聞いたところによると、今朝方、西側各所の支部が知らぬ間に増えていた神永組に襲撃されたらしく、西側全域、神永に全部持って行かれたとのこと。
支部の中にいた寄生虫たちが御堂からようやく出た、その途端御堂を食べたのだ。
おかげで、支部の建物や資金全部そのまま神永に取られてしまった。
御堂組の人間の数だって相当いるはずなのに、それを全部、何をどうしたか知らないけど、神永は消すなり吸収するなりしたらしい。
「…もう、うかうかしてられませんね。」
「そんなん、また潰しに行けばいいだろ?」
「うちの資料を全部持ってるんだよ、相手は。今行ったって、どうなるかは目に見えてる。」
「あー、やっぱ頭いいな神永。」
「褒めてる場合かシン」
嫌な空気が部屋の中に満ちる。