黒蝶は闇で輝く
「相変わらず、怖いのな」
「うるさいよ、慧」
「褒めてんだけど」
「褒めるの下手」
私が御堂組のトップになったのは二年前。
それまで私の父がトップだったけど、そんな父は行方不明になっている。
多分、こんな世界に生きているからもう死んでしまったと思う。
このことを、私たちは公表していない。
御堂組のトップが行方不明だと、もう死んだかもしれないと、そんなことを口にすれば御堂組は大混乱になる。間違いなく。
御堂組の絶対的トップがいないのならと、反乱を起こす者や他の組に情報を流す者が出るかもしれない。
そうなれば、父や先代がつくりあげてきた御堂組は台無しだ。
そんなこと、20代目である私が出来るわけがない。
父の不在を知っているのはここ本部に集まっている50人だけ。
他の支部の人たちは、もう無い父の姿を見て御堂組についているんだ。
「では、今日も御堂の為に」
「「「努めさせていただきます。」」」
「………行ってきます。」
「「「お気をつけて」」」
広い庭に膝をつく、53歳から16歳の男の人たち。
そして、私に頭を下げるんだ。
何よりも大切だと、命を懸けて守ると、父に言ったように私にも言った。