黒蝶は闇で輝く
「お嬢、本日の会議には参加しないそうですが…」
「あ…はい。学校もありますし、私本会議に出ても表には立ちませんから。なるべく、私は他から見えない方がいいかと思って。」
「お嬢は組長に変わって、ちゃんと務めを果たしてくださってますよ?」
「御堂を混乱させたくないので。」
学校までの道のり。
幹部である桂木さんと組のことについて話す大切な時間である。
隣の慧は興味なさげにスモークの濃い窓の外を眺めている。
本会議というのは月に一回開かれる。
全国の御堂組幹部が集まって、それぞれの支部の状況報告や、他の組の動きの情報交換などを行う。
御堂組が成立してからずっと行われていることだけど、組長が参加することはまずなかったから、今現在、父がいなくなったからといって私が参加しなきゃいけないということはない。
ただ、学びの場として、時々参加している。
私が現トップということは隠して。
でも桂木さんは、早く私の存在を公表したいらしい。
「西のことですよね、桂木さんが気にしているのは。」
「最近勢いがあるようですし…御堂が負けることはないと思いますが、早いうちに手を打つのがいいかと。」
「……それは、三上さんや桂木さん始めとする本部の幹部の皆さんに任せていますよね?」
「私は、お嬢を御堂のトップだと早く公表したいのです。そうすれば、物事の進行だってもっとうまく行きます。」
「まだ、その時じゃないと思います。桂木さん達に任せきりなのは悪いと思っていますが…まだ、早いです。」
運転席の桂木さんの肩が落ちる。
桂木さんは父のときも、こうして御堂について色々と話をしていた。
何をどうするとか、新しい組員の指導についてとか、色々。
今も、桂木さんを始めとする幹部の人たちには助けてもらっている。
御堂組については、まだまだ学ぶことが多い。