黒蝶は闇で輝く
──キーンコーン……
お昼のチャイムが鳴ると同時に騒がしくなる教室。
これもいつものことである。
一応お嬢様ってことでこの学校に通っているけど、特別扱いをしてほしいとかそういう要求はしてない。
ごく普通に、他の生徒たちとなんら変わりない生活を送っている。
「…飯行かねーの?」
「あ、慧起きたの?」
「チャイムがいい目覚ましになったからな。」
「じゃあご飯行こっか。」
私と慧は同じクラス、隣同士の席。
これについてはさすがに口利きしてもらった。
クラス替えをしても、同じクラスで隣同士の席になるようにと。
もちろん、クラスメートや学年の人たちからは変な目で見られる。
学年には400人近い生徒がいるのに、また同じクラスで隣同士の席なんて、怪しいって。
まぁ、お嬢様らしいからな。
それで納得している生徒たち。単純。
「今日の弁当なに?」
「いつも通りだけど何か?」
「……もうブロッコリー入れんなよ」
「好き嫌いはよくありません。」
「麗だって豆食わないくせに」
「慧くんうるさい」
「急にくん付けとか気持ち悪いからやめろ」
立ち入り禁止のチェーンを跨いで、入学当初に複製した鍵を使って、屋上へ続くドアを開ける。
学校はあんまり好きじゃない。
学校で学ぶことは、御堂に役立つとは思えないから。
それでも、高校くらいは出ておかないと世間的にアレだし(裏の世界の人間でもそれくらいは気にする。一応表向きは普通の人のフリしてるし)、勉強以外の人間関係を学ぶ必要もあったし。
高校には色々な人がいるから、組員を知るのにまとめるのに、役立つだろうって。
でも、結果的には慧と一緒にいるばかり。
お嬢様だ、なんて言ったから周りが距離を置いているし、それ以前に生徒たちには私たちの変わった空気を感じてるらしい。
単純だけど、馬鹿ではないらしい。
──プルルルルル...プルルルルル...
無機質な機械音。
初期設定のままの携帯が着信を知らせる。