タイムカプセル

ヨキ

ジリリリリリ!!!
「うわっ!びびった!」(ヨキはベッドから飛び起きた)
非常ベルのように激しい音がご自慢の、俺の目覚まし時計。本気でこいつすっげぇ~音なんだ。家族には『近所迷惑だからほんとにやめて』って言われてるんだけど、これがないと起きれない超寝起きの悪い俺。

今日は日曜日だ。んで当然仕事も休み。なのに何で俺が目覚まし時計で飛び起きたかって?

ちょうど10日くらい前にアカシから連絡が来たんだ。
『そろそろみんなで集まってタイムカプセル掘り起こそうよ』って。
アカシから連絡が来るなんて、中学卒業以来だ。
アカシは小学生の時の同級生で、女子の中でも一番仲が良かった子。
アカシは男勝りで姉御肌で面倒見がいいやつ。何度助けられた事か…。
そんなアカシからの久々の連絡を俺が無下に断れる筈もなく、正直タイムカプセルはどうでも良かったんだけど、小学校〜中学校時代に仲良くしてたヤツらにも会いたくて、行くことにしたんだ。

久し振りにみんなに会うんだし、ちょっと気合い入れて行こう!って思ってたのに、いつの間にか出なくちゃいけない時間が過ぎてて、昼飯も食わずに玄関に駆け出した。
学校までランニングだ。
体力には自信があるし、小学校なんて歩いても15分程度。
走れば余裕、余裕。
でも慌てて出過ぎてうっかりしてた。
気合い入れたつもりがいつも通りの服装で、走りながら後悔した。
今のところ、昼飯にありつけなかったことよりも、気合いを入れ忘れた服装に激しく後悔。
だって数年振りに会うのに、俺、GパンにTシャツ。その上にチェックのネルシャツを羽織ってる。
めちゃくちゃ普段着じゃん!
でも今は服装で後悔してるけど、後に昼飯が食べられなかったことに激しく後悔する羽目になるのは、また別の話な。

あ、自己紹介遅れました。
俺の名前はヨキ。『世を輝かせる』って書いて世輝。…完全に名前負けだよ。
そして俺は体力勝負な細マッチョ。
小学生の頃、町内会の障害物競走で毎回一位だったんだ。
町内会って規模はちっこいけど、うちの町内会の障害物競走はここいらではちょっと有名なイベントで、そこで一位取ったってなると軽く自慢出来るくらい、何故か障害物競走にだけは力を入れてたんだ。
ヨキ君、忍者みたいって女子にも結構モテたっけ。
てなわけで、頭はそんなに良くなかったけど、体力だけは自信があるんだ。

「おい!僕の前をチョロチョロ走るな!目障りだ!」

急に言われてびっくりして振り返ると、そこに居たのはナツメだった。

「お?ナツメ様のお坊っちゃまじゃねぇ〜か?お前何でチャリで俺に負けてんだよ?しかもお坊っちゃまがチャリって!」

わざと「クククッ」と小さい声を出して笑ってやった。
俺って嫌いなヤツってあんまいないんだけど、唯一こいつだけは苦手。
こいつも俺のこと、相当嫌ってるんだろうなって思う。
殺気すら感じることあるもんなぁ〜…て言うのは冗談だけど、そこまで嫌いなら自分から声かけなきゃいいのにって思う。
案外俺のこと、好きだからかまいたいだけだったりして…なんて呑気に考えてるうちに学校に到着。
みんな着いてるかな?コウキは来るんだろうか?
あいつとは親友だったけど、中学の途中で引っ越しちまって以来、何度か電話で話した程度でいつの間にか疎遠になってたな…。

タイムカプセルを埋めた校舎裏の銀杏の木の下に既に3人が集まっていた。
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