お嬢様、愛してます。



「で?どうなのよ?」

「な、何が」


放課後、幸太とそうちゃんは部活へ行き

私とりほちんは誰もいない教室で2人で話していた。



「だから、執事とのドキドキ生活よ。昨日から一緒に暮らし始めたんでしょ?」


そう言ってりほちんは顔をニヤニヤさせながら、わたしに近づく。と、同時に私は一歩下がる。


ていうか、ドキドキってどういう意味よ。

確かにある意味ドキドキだけども。

こっちは男とろくに2人きりになったこともないのに、りほちんったら凄く面白そうな顔してる。


「執事と2人きりで屋根の下だなんて、面白そうじゃない」


りほちんはこう見えて男性経験は豊富。ただし年上に限る(らしい。)


「もう、りほちん!こっちだって色々あって、今でも何が何だか分かんないの」


そう。急にこんな生活に一変して、私も何が何だか分からないのです。


「ごめん、今のは無神経だったね。

でも浩二さんも昌子さんも同時に亡くなって、日向立ち直れないんじゃないかって正直すっごい心配だった」


浩二さん、昌子さんというのは、私の父と母のこと。


父、西園寺浩二。

母、西園寺昌子。



今から一ヶ月前。
2人は、結婚記念日にデートとしてドライブへ出かけたその日

大型トラックと衝突し、そのまま帰らぬ人となってしまった。

私は高校受験に合格して、次の日は入学式だったのにな。


事故の原因は相手の飲酒運転だったそう。しかもその人は助かって、父と母だけが亡くなってしまった。


怒りを通り越してもはや「無」。
当時の私は恨む気力すらなくしてしまっていた。


「行ってらっしゃい」

「「行ってきます」」


そう言って笑顔で見送ったのが、お父さんとお母さんとの最後の会話だったな。


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