お嬢様、愛してます。
落ち込んだところで父や母は帰ってこない、そう思っていた私は
涙流さず、顔色ひとつ変えず、ただ無表情でお葬式で飾られていた父と母の写真を見つめていた。
父にも母にも兄弟はいない、どちらの祖父母にも会ったことがないし、むしろ生きているのかすら分からなかった。
だから知人や友人など少人数の人しか来なくて
とても虚しいお葬式だった。
そしてずっと無表情だった私に対して、彼らは
『冷たい子なのねえ』
『ご両親を亡くされて悲しくないのかしら』
『涙の一粒も流してないわよ。なんて子なのかしら』
そんな冷たい言葉と、冷たい視線をさんざん浴びた。
『じゃあ日向、あたし達はこれで失礼するね。
日向はこの後どうする・・・?』
お葬式に来てくれた数少ない人たちの中に、りほちんと幸太もいた。
お葬式が終わって、心配でわざわざ私のところまで駆けつけてきてくれたみたい。
『わざわざありがとね。でも、今は1人でいたいんだ。
ごめんね』
『そっか・・・』
こんな時でさえ友達に素直に泣いて甘えられない私は、父と母、どちらに似たんだろうか。
『泣きすぎてこれ以上顔ぐちゃぐちゃにすんなよ?
ただでさえブスなんだからさ・・・ほら、だから、その。
なんかあったらいつでも俺らに言えよ!強がってんじゃねーよ、バカ』
『はは、慰めてんのかけなしてんのか分かんないよ。
でも、ありがとね・・・本当に、ありがとう』
2人の言葉が本当に嬉しくて、何度も何度もありがとうと伝えた。
幸太はなんだか少し照れくさそうだったけど、この時は幸太が少しかっこよく見えたよ。
でも2人が帰って、1人になると寂しさが一気にこみ上げてきたんだ。
「お父さん、お母さん・・・私1人ぼっちになっちゃったよ。この先どう生きてけばいいのかな?
2人のところ、あたしも行っちゃダメ・・・?」
答えてくれるはずのない、父と母の写真に語りかける。
2人はこんなに笑顔で笑っているのに。
私はどうしてこんなに辛いの。
いっそのこと、私も死んでしまえば簡単な事なのか。
そんな風にまで思えてしまった。
『お迎えに上がりました。お嬢様』
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そんな中、彼は突然現れた。