渡り廊下を渡ったら

ぱち、と目が覚めた。

昨日はやはり身体が休息を必要としていたのだろうか、いつもよりもずいぶん早く眠くなって、夢も見ないでぐっすり眠ったみたいだった。
起き上がってみれば、窓の外にはオレンジ色と濃紺色のグラデーションが広がっている。
こちらの世界でも、月と太陽はひとつずつ。
時計はないけれど、額縁の中に太陽と月のミニチュアみたいなものが描かれた、天体盤と呼ばれるもので時間を知ることができるようになっている。
額縁の中はバリエーションが豊富だ。
シンプルなものは、背景が空の絵であることが多いけれど、もっと凝った造りのものになると、背景が森だったり、海だったりする。
額縁の中の太陽が空にある時間には、額縁の中も明るくなり、太陽の沈む時間になると、ゆっくりと夕日の色に染まる。そして、太陽と入れ替わりに月が昇り、夜になると額縁の中も暗くなる。
最初の頃は珍しさもあって、夕方になると天体盤の中の空の様子に見とれていたのを思い出す。

「・・・まだこんな時間かぁ・・・」
天体盤の中の太陽は、やっと昇り始めたころだった。
外が明るくなるまで、まだゴロゴロしていてもいいけれど・・・。
そう思って目を閉じても、もう眠る気にはなれない。
結局、身支度をして静かに部屋の外に出たのだった。
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