指先から、アイ。
惚【とぼ】けて誤魔化そうとしている彼を見て、私はひとつため息を吐く。
「知ってる?」
「何を?」
「ため息吐くと、幸せ逃げて行くんだよ」
ニコニコと笑って言う彼に本当に腹が立つ。
余裕な顔が、無償にいら立つ。
そんなことぐらい知ってるわ!と言いたかったのだが、
「笹木!うるさいぞ!」
と先生に注意されては何も言えまい。
仕方なしに私は再び前を向き、先生の話を聞く態勢に入った。
ああ、もう。
コイツの前になってからいいことない。
そう思っていたら。