恋人
ほっぺたを指でつついてみたら、うーん、とふにゃふにゃしながらこちらへ寄ってきた。

寝ぼけてる姿を見たのは初めて。


一緒に夜を明かしたことはなかったから。





初めて彼女を抱いたときも――死ぬほど幸せな気持ちになったのを今でも憶えている。

ただ気持ちが先走りすぎて、泣かせてしまったことはほんとうに後悔した。


若いわけでもないのに、若さゆえの……なんとやら。

たいして経験が多いほうでもなかったが、今まで抱いた女の中で一番、大切にしたいって思える女だった。



芯はしっかりしてそうで――案外脆い。

へたに触れると壊れてしまいそうな、おれの大切な宝物だった。



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