Ending Note
あたしは虎太郎をまっすぐに見据えると、泣きそうな声で言った。
「ママの物が何ひとつない。服も、靴も、アクセも、全部よ、全部!」
「―――は?」
そう。
ママの私物が、すべてこの家から無くなっていた。
まるで、ママがあの世に持って行ったかのように。
「虎太郎、あんたは見つけたの? ママの友達の連絡先」
「いや、それがまだ……」
ママはスマホに登録するだけじゃ不安だと言って、手帳にも連絡先を書いて残していた。
あたしはそんな面倒なことをするママに、
“パソコンにデータを残せるよ”
と、呆れて言ったのだけれど、ママは頑として聞く耳を持たなかった。