Ending Note
「先週、一時帰宅したときに片付けたのかな……」
思い出したように言う虎太郎に、あたしは「そんなはずない」と一蹴した。
先週末、1泊2日だけママはこの家に帰ってきた。
迫りつつある残された期間、1回でいいから家に帰したいというあたしたち家族の強い希望だった。
自力で呼吸をするのが厳しく、酸素ボンベを装着していたほどだったから、そんな体で片付けなんて到底無理だ。
「……とにかく、今はやることがあるから、そっちを優先させよう」
「……うん」
虎太郎の言うことももっともだ。
ママの私物が無くなった謎の解明よりも、あたしたちには早急にやるべきことがあるのだから。
「あ、」
パパの喪服を準備しようと再び寝室に行く途中で、あたしはふと思い出してキッチンへと向かった。