Ending Note
玄関の前で何度も深呼吸して落ち着きを取り戻したあたしは、「ただいまー」といつものように大きな声で言いながらドアを開ける。
玄関にある姿見で顔を見ると、目が赤くて腫れている。
いっぱい泣きました、と言わんばかりの顔。
とにかく洗面所に直行して、顔を洗おう。
ママと顔を合わせないように洗面所に向かおうとすると、リビングから楽しそうな声が聞こえてきた。
あの声は……、ママの妹の静子おばさんだ。
32歳の静子おばさんは独身で隣町に住んでいて、時々、うちで晩御飯を食べたりもする。
「あれー? いま帰ってきたの千春ー?」
静子おばさんのそんな声が聞こえると、あたしは洗面所に飛び込み、急いで顔を洗う。
「千春ー? 何してんのー? 静子が来てるよー?」
「はぁーい、いま行くー」
顔を洗い終えてもう一度、鏡をのぞきこむ。
さっきよりは幾分マシになった……かも。