Ending Note


玄関の前で何度も深呼吸して落ち着きを取り戻したあたしは、「ただいまー」といつものように大きな声で言いながらドアを開ける。



玄関にある姿見で顔を見ると、目が赤くて腫れている。

いっぱい泣きました、と言わんばかりの顔。

とにかく洗面所に直行して、顔を洗おう。



ママと顔を合わせないように洗面所に向かおうとすると、リビングから楽しそうな声が聞こえてきた。



あの声は……、ママの妹の静子おばさんだ。

32歳の静子おばさんは独身で隣町に住んでいて、時々、うちで晩御飯を食べたりもする。



「あれー? いま帰ってきたの千春ー?」



静子おばさんのそんな声が聞こえると、あたしは洗面所に飛び込み、急いで顔を洗う。



「千春ー? 何してんのー? 静子が来てるよー?」


「はぁーい、いま行くー」



顔を洗い終えてもう一度、鏡をのぞきこむ。

さっきよりは幾分マシになった……かも。



< 131 / 301 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop