Ending Note
「鴨井いずみ! 思い出した、いずみちゃんだよ!」
「あ~、いずみちゃん! そうだったそうだった」
会話に入りたかったけれど話がどうにも見えなくて、諦めたあたしは冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注ぐ。
2人の話からこぼれる単語を拾っていってみると、静子おばさんの同級生の鴨井いずみちゃんの高校時代の話らしい。
「ほんとに吹っ切れてよかったよ、いずみちゃんも」
がはは、と笑う静子おばさんの声がおかしくて、笑いを堪えながら麦茶を喉に流し込む。
「ほら、よく言うじゃない。初恋なんか実らないってね」
ごくり、と、麦茶を飲みこんだ音が大きく聞こえた。
“初恋なんか実らない”
――とどめの一言だ。
リビングからさっさと退散して自分の部屋に行けばよかった。
なんだってこんな日に、こんな言葉をダイレクトに聞いてしまったんだろう。