Ending Note
「……よかったのかな、今日誘ったりして」
家を出てすぐ、裕貴先輩が思い悩んだように口を開いた。
「え? なんで?」
「いや、お母さん……ごちそう作っていたんじゃないのか?」
「あぁ……大丈夫です。毎年、家族で過ごしていたし。ママのことだから、裕貴先輩よりも家族を選んだら蹴り入れられるかも」
「あのお母さんならやりかねないな」
苦笑しながら、裕貴先輩はあたしの手をそっと繋ぐ。
“キスまでなら許す”
突然ママの言葉を思い出して、一気に顔が火照る。
「……どうした?」
黙り込んだあたしの顔を裕貴先輩が覗き込めば、あたしはその口元にしか目がいかない。
「あっ、いえいえ、何でもないです」